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「背水の陣」で起業する方は実際のところ少なくありません。しかし、人生で数千万、数億円の借金を背負うような起業に対して、「ダメだったらしょうがない。ここが勝負だ。」という考え方は正しいのでしょうか?

確かに「背水の陣」は気合が入るが・・・長くは続かない

背水の陣とは

川や海などを背にした陣立て。あとに引けぬ所で決戦する構え。転じて、もし失敗すれば滅びる覚悟で事に当たること。

を意味します。中国の楚漢戦争の中で漢軍と趙軍とが井陘(いすい)にて激突した戦いで、漢軍が背水の陣という独創的な戦術を使って趙軍を打ち破ったことからことわざとなっています。

確かに「もう退路がない」状態にしておけば、気合が入るのは間違えありません。

しかし、「会社を経営する」ということは、中国の井陘の戦いのように数日、数週間で終わるようなものではありません。

「俺には起業しかない。稼ぐしかない。」という状態になったら、なにがなんでも成功させようという気持ちになって、がむしゃらに働くことができると思います。しかし、このブースト状態を1年、2年と続けられる覚悟はありますでしょうか?

少なくとも、私には無理でした。

そんな覚悟を持つことよりも

  • 期限を決めて
  • 逃げ道を決めて

「失敗したらこうやってやり直そう。」という逃げ道を作った上で、起業をした方が、割り切って経営に集中できると考えたのです。

もし、「何千万もの借金をして、起業が失敗したらもう終わりだ。」なんて気分で仕事をしていたら、切迫感によって、冷静な判断ができなくなることの方が起こりうるリスクだと考えたのです。

私がとった「逃げ道」

1.借金をしないで起業する

33歳のときに資本金100万円で起業をしました。

しかし、預貯金は500万円ほどあったので、資本金を調達する必要性はありませんでした。

というよりも、30歳で起業する選択肢があったのですが、3年間貯金して自己資金での起業を優先したのです。

「この判断が本当に成功だったのか?」はわかりません。もし3年早く起業していたら、もっと成功していたかもしれないからです。

しかし、現実で借金をしないで起業することを決めて、500万円は自分で貯めようと決意したのです。

自己資金だからこそ良かった点もあります。

お金を使うことに対して慎重になる

自分が苦労して貯めたお金ですから、銀行から借りたお金、助成金や出資を受けたお金と違って、あきらかに無駄遣いを回避する気持ちになりました。

起業当時は

  • 会社はバーチャルオフィスで実家で起業
  • パソコンは中古の2万円のもの
  • 1日1000円で生活
  • 図書館フル活用
  • 起業の手続きはすべて自分でやる
    ・・・

そんなにケチをしなくても・・・と思うぐらいお金を使わないことに注力しました。これが借りたお金や助成金、出資されたお金であれば、ここまではしなかったと思います。

  • 都会にオフィスを持とう
  • はじめから社員がほしい
  • オフィスの家具もいいものが欲しい
  • 最新のパソコンが効率を上げる
    ・・・

なんて、考えていたのではないでしょうか。自分で稼いだお金と人から預かったお金では重みが違うのです。

利益を上げることだけに集中できる

  • 銀行から借りれば、銀行に返済と経営状況の説明が必要になります。
  • 出資してもらえば、投資家に経営状況の説明が必要になります。
  • 助成金をうければ、助成金をもらった事業計画を実行する必要があります。

「PLだけ見ているわけにはいかない。」ということです。少なくとも、自己資金だからこそ「どうやって利益を上げるか?」だけに集中することができました。

2.期限を決める

2年間

これが私が決めた期限です。

2年間の間に会社の収益、キャッシュフローがプラスに転じなければ、会社は一旦解散して、もう一回転職活動をして会社に勤めよう。

と、起業する前に決めました。

なぜ、2年かというと、起業当時は33歳だったので「35歳までなら問題なく転職できるかな」と思っていたのと、貯金が500万円あって資本金に100万円使ったので残りは400万円です。「月15万円で暮らせれば、24か月収入がなくても、360万円なので耐えられるかな。」と思いました。

「2年間猶予を挙げるから、死ぬ気で結果を出せ。」

これが自分から自分に宛てた指令でした。

期限を決めるというのは非常に重要なことだと思います。

「やれるだけやろう。」とか「資金が尽きたら」とか、具体性のないものは成果が出にくいのです。

3.自己破産のことを調べる

この段階では借金をしていませんでしたが、万が一借金をすることも選択肢から完全に外していたわけではありません。

自己資金だけで回らなくなったら、融資を受ける必要があるとも考えていたのです。

そこで、「借金があって倒産したとしたら、俺はどうなるんだろう。」ということを詳しく調べてみました。

結果だけ書きますが・・・

  • 銀行から融資を受ければ連帯保証人として社長個人も借金をする必要がある
  • 自己破産をすれば借金はチャラになる。
  • 自己破産のデメリットは5年~10年間、ローンが組めないことぐらいで他には特にない
  • 自己破産は何回でも可能となっているが、実際には1回でないと認められないケースが多い
  • 自己破産をしても、親戚や身内への影響はない

ということです。

「自己破産だけはしたくない。」で数億円を返して会社経営を成功させている団塊世代の社長のストーリーを読んだこともあるのですが・・・

私は「別にいいじゃん。国が決めたルールなのだから。」と思いました。

「会社経営で失敗して数億円の借金を抱えたとしても、自己破産すればいいんだ。」とほっとしたことを覚えています。

自己破産は勘違いされている方も多いですが、別に親戚や家族に迷惑をかけることにはならないのです。迷惑をかけるのはお金を借りた銀行などです。

「逃げ道」は使わずに今に至る

執筆時点(2016年7月)は、この「逃げ道」を使わないで済んでいます。

というか、よほどのことがなければ今後も使う必要がない状態になりました。

「逃げ道」は使いませんでしたが、精神的な余裕や冷静な判断という意味では大きく自分の経営に役立ったと考えています。

今は、本業と関係のない

  • 不動産投資による安定収入
  • 産業用太陽光発電による安定収入
  • 経営セーフティーネットへの加入
  • レバレッジドリースによる将来への節税対策
    ・・・

など、さらに「逃げ道」の数を増やしています。

「どんだけ小心者で臆病なんだよ。」と思うかもしれませんが、その通りです。小心者で臆病だからこそ、本業が行き詰った場合、予期せぬ借金を背負った場合、市況が大幅に変わった場合の「逃げ道」を用意することで、心の余裕がある中で経営をしているのです。

まとめ

「逃げ道」を作って起業することは、経営の成功率を高めると思います。

一か八かで起業して、大成功する経営者もいます。

しかし、少しでも成功率を高めるためには「逃げ道」を作りましょう。これは起業フェーズだけではなく、新規事業への投資や事業の変更時も同じことだと思います。

「逃げ道」があることで心の余裕を持って、冷静な経営判断ができるのです。